アレルギー専門医監修 ヘアカラーリングを安全に長く楽しむための正しい知識

アレルギー専門医監修

ヘアカラーリングを
安全に
長く楽しむための
正しい知識

矢上 晶子先生

記事監修医師のご紹介

矢上 晶子先生
矢上 晶子
先生
  • 藤田医科大学ばんたね病院
    総合アレルギー科 教授
  • 藤田医科大学
    医学部先端アレルギー免疫共同研究講座
    教授
  • 藤田医科大学
    総合アレルギーセンター センター長

日本のヘアカラーリング率は年々増加しており、特に女性では70%以上との報告もあるなど、ヘアカラーリングは、幅広い世代の身だしなみやファッションの一つとして受け入れられています。
ヘアカラーリング製品には様々な種類があり、最も多く使用されているものは酸化染毛剤(以下、ヘアカラー)です。一方で、ヘアカラーによってアレルギーを発症してしまう方も少なくありません1)
ここでは、ヘアカラーリングを安全に長く楽しむための正しい知識を得ていただくとともに、皆さんが漠然と抱いている疑問についてお答えしたいと思います。

“ヘアカラー”による
皮膚トラブルとは?

ヘアカラーによる皮膚トラブルは、大きく分けて刺激性とアレルギー性に分類されます。

刺激性の場合は、皮膚が敏感な方や皮膚のバリア機能が弱っている方において、皮膚に付いた化学物質によって、赤み、痛み等の症状を伴う皮膚炎が起こります。皮膚の状態によっては、その物質に触れても、症状が出たり出なかったりします。
アレルギー性の場合は、皮膚に付いた化学物質から体を守るための仕組み(免疫)が過剰に反応し、体に障害をもたらすことで起こります。特定の物質に対してアレルギーを獲得すると、一生、その物質に触れるたびに症状が生じ、繰り返すことで増悪することもあります。

では、それぞれの皮膚トラブルの症状や特徴について、より詳しく解説いたします。

刺激性(一次刺激性接触皮膚炎)の皮膚トラブル アレルギー性(遅延型アレルギー)の皮膚トラブル アレルギー性(即時型アレルギー)の皮膚トラブル

患者さんの中には、皮膚トラブル経験後も髪を染め続けたいという意向が高く、ヘアカラーの使用を継続してしまうケースもあります。アレルギー性の皮膚トラブルの場合には、使用継続により遅延型アレルギー、即時型アレルギーともに重症化することがあります2)。安全にヘアカラーリングを続けるために、少しでも不安を感じた際には、ご自身での判断だけでなく、皮膚科医への受診をお勧めいたします。

それでも“ヘアカラー”が
選ばれる理由は?

それでも“ヘアカラー”が選ばれる理由は?

ヘアカラーには他のヘアカラーリング製品では代替しにくい大きなメリットがあります。
カラートリートメントなどのヘアカラーリング製品と比べ、染まりの均一性、色持ちの良さなどが優れているほか、髪を明るくできる(髪色の自由度が高い)という点が大きな特徴です。きれいに髪色を整えることは、清潔感や印象の維持に大きく貢献するだけでなく、心理的な満足感を高める効果も報告されています3)

“ヘアカラー”による
アレルギーの原因は?

ヘアカラーによるアレルギーの原因は?

ヘアカラーアレルギーは、1剤に配合されている「酸化染料」、中でも「パラフェニレンジアミン」が原因となることが多いです4)
ヘアカラーには、「パラフェニレンジアミン」の他、似た構造を持った「トルエン-2,5-ジアミン」などの「ジアミン系」染料が主に使用されます。「ジアミン」と呼ばれる染料は、染毛効果が高く、様々な色の調整が可能であるなどのメリットがある一方で、アレルギー性の皮膚トラブルの原因になりやすいという点が大きな課題です。

昨今では、安全性の観点から「ノンジアミン」と謳った製品も散見されます。
「ノンジアミン=完全に安全」ではない点に注意が必要です。いわゆる「ジアミン」には含まれない、パラメチルアミノフェノールやオルトアミノフェノール、パラアミノフェノールなどもヘアカラーの染料として使用されますが、これらはパラフェニレンジアミンに次ぐアレルギーリスクがあると報告されています4)
また、ヒトの免疫においては似た構造の成分に反応する“交差反応”が起こることもありますので、実際にどの染料で、どのようなアレルギー症状が生じるのかを正確に把握するためには、皮膚科医による皮膚テストでの詳細な評価が有用です。

“ヘアカラー”を
長く楽しむための
ポイントは?

残念ながら、ヘアカラーアレルギーを完全に予防できる方法は確立されていません。
できるだけ長く安心してヘアカラーを使用するために、以下の点に注意してください。

皮膚アレルギー試験
(パッチテスト)を
毎回必ず行いましょう
これまで問題なくヘアカラーを使用されていた方でも、体質の変化などにより突然アレルギー反応が現れる場合があるため、説明書に記載された「皮膚アレルギー試験(パッチテスト)」の方法を確認し、ヘアカラーを使用する48時間前を目安に毎回必ず行いましょう。
ヘアカラーは頭皮状態の良い時に
使用しましょう
ヘアカラーは頭皮に傷や炎症がない状態で使用してください。頭皮を健康に保つことでバリア機能が高まり、アレルギーリスクの低減が期待されます。また、体調が優れない時も使用を避けましょう。
少しでも異常を感じたら
使用を中止しましょう
アレルギー症状が軽度であっても、使用を繰り返すことで悪化する可能性があります。少しでも違和感を感じたら使用を止めましょう。症状が長引く場合は皮膚科医の受診をお勧めします。
ヘアカラーの使用頻度を
下げましょう
月2回などヘアカラーを頻繁に使用することは、ヘアカラーアレルギーの発症リスクを高める可能性があります。色落ちや生え際の白髪をカラートリートメントや一時着色料でカバーするなど、ヘアカラー以外の製品も併用し、ヘアカラーの使用頻度を下げる工夫も必要です。

どんな
ヘアカラーリング製品が
ある?

現在、さまざまなヘアカラーリング製品が発売されていますが、それぞれに良い点と悪い点があります。主に毛髪を明るくしながら染めることができる医薬部外品と、毛髪を染めることのみできる化粧品があります。染まりの良さやアレルギー症状の有無など、ご自身の希望に合わせながら製品を選びましょう。

医薬部外品(代表例)

ヘアカラー
(酸化染毛剤)
ヘアブリーチ
(脱色・脱染剤)
ヘアカラー
リングの
メカニズム
イメージ図 イメージ図
○良い点/
×悪い点
  • 一度でしっかり染まる
  • 髪を明るくできる
  • 色持ち期間が長い
  • 髪や頭皮への負担が大きい
  • アレルギーリスクが比較的高い
  • 髪を明るくできる
  • 髪や頭皮への負担が大きい
代表
アレルゲン
パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、トルエン-2,5-ジアミン、オルトアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール 過硫酸塩
医薬部外品 図

化粧品(代表例)

ヘアマニキュア カラートリートメント
カラーシャンプー
ヘアマスカラ
カラースプレー
ヘアカラー
リングの
メカニズム
イメージ図 イメージ図 イメージ図
○良い点/
×悪い点
  • 髪へのダメージが少ない
  • 1か月程度色持ちする
  • 髪を明るくできない
  • 地肌汚れに注意が必要
  • 髪や頭皮への
    ダメージが少ない
  • 髪を明るくできない
  • 徐々に染まるので
    染まりが弱い
  • 髪や頭皮への
    ダメージが少ない
  • お出かけ前など
    手軽に使える
  • 髪を明るくできない
  • シャンプーで落ちるので
    色持ちはしない
代表
アレルゲン
特になし 塩基性青99、
コカミドプロピルベタイン
特になし
化粧品 図

※ヘアカラーアレルギーと診断された場合は、ヘアマニキュアやカラートリートメントなどの酸化染料を含まないヘアカラーリング製品の使用が推奨されます。
ただし、まれに塩基性染料などの染料や香料、界面活性剤、防腐剤などもアレルギーの原因となることがありますので、ご注意ください。

よくある疑問を解決!

みなさまからよくいただいている疑問にお答えします。

ノンジアミンなら安全ですか?
リスクは低くなる可能性がありますが、完全に安全とは言えません。 パラメチルアミノフェノールやオルトアミノフェノール、パラアミノフェノール等のいわゆるジアミンではない染料でもアレルギー性の皮膚トラブルを生じる可能性があります4)。また、香料など染料以外の成分がアレルギーの原因となる場合もあります。
長引く痒みが毎回出る場合は、ヘアカラーをやめるべきですか?
基本的には中止をおすすめします。 軽い症状でもアレルギーの初期サインの可能性があり、続けると次回強く症状が出る場合があります。一方、香料など染料以外の成分が原因となっている場合には、原因成分が含まれないヘアカラーであれば使用できる可能性もあります。どの成分に反応してアレルギー反応が出ているかを特定することで、頭皮トラブルなくヘアカラーリングを継続することも可能ですので、皮膚科医を受診し、パッチテスト等の皮膚テストで詳細に検査されることをお勧めします5)
理・美容室で染めるときと、市販のヘアカラーを使用して自身で染めるときに、
アレルギーのリスクは変わりますか?
理・美容室で使用するヘアカラーも薬局などで購入できるヘアカラーもアレルギーリスクは基本的には変わりません。 理・美容室で使用するヘアカラーも薬局などで購入できるヘアカラーも、含まれる染料の種類は基本的に同じです。理・美容室ではできるだけ頭皮に薬剤が接触しないように染めるなど工夫されることもあります。
ヘナって安全ですか?
ほとんどの方が安全に使用できますが、注意すべき事項もあります。 ヘナ(ヘンナ)といった植物の葉から抽出した天然色素を原料としたヘアカラーリング製品が化粧品や雑貨として数多く流通しています。ほとんどの方が安全に使用できますが、ヘナ自体にアレルギー反応を起こすという症例報告7)もあります。
純粋なヘナ製品を使用した場合、仕上がりの色は橙味が強くなるため、白髪を目立たなくする効果は限定的です。暗い色に染めるヘナ製品も販売されていますが、それが化粧品と表記されていない場合には、パラフェニレンジアミン等の酸化染料が配合されていることもありますので注意が必要です6)。昨今、ヘアカラーによる即時型アレルギーの方が、美容所でかつら用のヘナ製品(雑貨)を使用され、含まれていた酸化染料によりアナフィラキシーショックを発症、救急搬送されたという事故事例が発生し、国民生活センターから注意喚起が出されました8)。ヘナ製品を使用する前には、それがどのようなものであるのかを必ず確認するようにしましょう。
皮膚アレルギー試験(パッチテスト)の確認は30分後と48時間後、どちらも必要
ですか?
どちらも必要です。 30分後は刺激や即時型アレルギーの確認、48時間後は遅延型アレルギーの確認をするためのテストとなっています5)。試験部位にかゆみ、赤み、腫れ、ブツブツなどの症状が出ていないか、しっかりと確認してください。ヘアカラーを多く塗りすぎると、刺激反応が生じたり、濃く着色されて反応が見えにくくなります。ヘアカラーはごく薄く塗ること、また試験部位の局所的なブツブツも見逃さないことが重要です。
花粉症や食物アレルギー、金属アレルギーがあると、ヘアカラーアレルギーにな
りやすいですか?
ヘアカラーアレルギーとの直接的な関係はありません。 ただし肌荒れなど、頭皮の皮膚バリア機能が落ちているときにヘアカラーの使用を繰り返すと、アレルギーのリスクが高まります。理・美容師の方においては、手荒れにも注意いただくと良いでしょう。日ごろからヘアカラーと触れる部分の皮膚状態を健康に保つことが重要です。
背景

さいごに

ヘアカラーリング(特にヘアカラーの使用)は、多くの方にとって生活の一部であり、外見だけでなく気持ちの面でも大きなメリットがありますが、その一方で一定のリスクも伴います。ヘアカラーリングを「やめるか続けるか」ではなく、適切な知識と対策を取りながら、ヘアカラーと上手に付き合い、安心・安全に長くヘアカラーリングを楽しんでいただければと思います。

参考文献等
1) 日本ヘアカラー工業会安全性委員会, COSMETIC STAGE, 12(1): 55-68, 2017.
2) 矢上晶子, 日本香粧品学会誌, 44(1) : 36-45, 2020.
3) 荻原ら, 第2回日本化粧品技術者会学術大会, 2024.
4) 伊藤明子, J Visual Dermatol 17: 443-449, 2018.
5) 日本アレルギー学会, 皮膚テストの手引き2025.
6) 日本ヘアカラー工業会, ヘアカラーリングABC, Q17
(https://www.jhcia.org/haircolor-abc/faq.html)
7) 西岡和恵, MB Derma, 200: 23-28, 2013.
8) 独立行政法人国民生活センター 発表情報 公表2026年5月20日
(https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260520_2.html)

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